堂倉谷はでかかった:台高山脈・宮川水系堂倉谷本谷


【日程】 日時:2015/9/20(日)~21日(月)
【メンバー】森麻呂さん(L)、Nabetakeさん、岳
【遡行グレード】3級

前夜、トミスミートにて頂いた牛肉と、
おいしいお米で膨らんだお腹を4つ載せて、
森麻呂VEZEL号は南へ南へと紀伊半島の急峻な山合いのカーブが続く道を快調に飛ばしていった。

向かっているのは大台ケ原の駐車場。
時折現れる集落はとても静かで人影が少ない。
僕等は在りし日の山の民の生活に思いを馳せた。

大台ケ原に近づくと、そこは雲上の世界。
大峰山脈が青い空の下に長く長く稜線を伸ばしている。

大台ケ原の駐車場は7割方埋まっていた。
軽装のハイキング客がほとんどだ。

僕等のザックは70L程。
一泊するためのテント/シュラフやロープ/ハーネス/ヘルメット/沢靴と沢装備が詰まっている。
大台ケ原を満喫するWatayukiさんと別れて僕等は日出ヶ岳へ向かった。
ハイキング客のための散策路をでかいザックを担いでガシガシ進んだ。

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日出ヶ岳山頂にはすぐに到着。

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ここからは僕等がこれから二日間篭もる谷が良く見える。
どう見ても長い行程だ。
心が弾む。

日出ヶ岳から大杉谷へ下っていく山道に入ってからは出逢ったパーティーは5組程だったように思う。
堂倉の避難小屋まで来る沢旅に胸を膨らませ駆けるように下った。

避難小屋から少し進むと林道を越え急峻な登山道へと入る。
入り口にはゲートがあり、仰々しく注意書きが書かれていた。
どうやら登山道が崩落しているらしい。

急な登山道を下っていると間もなく豪壮な滝の音が聞こえてくる。
山を歩いていて沢の音が聞こえるとテンションがあがってくる。
僕は沢が好きなのだ。岩よりも沢だ。
自然と遊ぶ感覚が最も強いのが沢だと思う。
岩は自分との勝負だ。
自分の可能性を広げるために鍛錬する場が岩だ。

目の前に堂倉滝が現れた。

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「うーおー、すっげー!」思わず僕は叫んだ。
こんなに大きな釜はみたことがない。
横綱の化粧廻しのような迫力でドウドウと滝が流れる。
僕の知っている丹沢や奥多摩の滝とはスケールが違う。
スケールが大きいと遠近感がわからなくなる。
すぐ近くに滝があるように思えるし、見た目よりも遠くにあるようにも思える。

これから遡行する堂倉谷のスケールを想像し、逸る気持ちを抑えながら沢装備を支度する。
この時間も僕の大好きな時間だ。幸福感に包まれる。

揺れる橋を渡って少しだけ登山道を歩くと赤テープがあった。
見上げると急な尾根に踏み跡がかすかに残る。

取り付くとすぐにずるずる崩れる土砂と木の根と脆い岩のクライミングだ。
いきなりなかなかの辛さ。
やっとこさ登山道に這い上がると綺麗な階段上の登山道が下から伸びている。パイプの手すりまである。
笑うしかない。沢にはやる気持ちが僕等の視界を狭めているようだ。

降り口を探してウロウロしていると、森麻呂さんの声が聞こえる。
「こっちにあったぞー」
湿気と泥でボロボロのロープが、ザレザレの斜面に申し訳程度にかかっていた。
崩れていくザレ斜面を石を落とさないように20m程降りると堂倉滝の上に降り立った。

いきなり幅20m程の川幅いっぱいに広がるナメだ。
白い岩肌の上を水が踊るように流れている。眩しい。

しばらく歩くとすぐに30m程の大きな滝が現れた。釜も大きな釜だ。
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登り口を探してみるが、迫力に気圧されて、とても登れそうにない。

左岸の踏み跡と赤テープを辿って高まくが、延々と上に向かって赤テープが僕等を誘う。
空腹と重なって、かなり辛かった。
台高の高巻きはさすがにつらいなぁ。
やっぱり高巻きもスケールが違うなぁなどと息切れしながら考えていたら尾根に出た。
登山者の熊避け鈴の音が下から聞こえてくる。
谷を見下ろすと80mは上がっているように思えた。

さすがに間違えたかと、小休止をとってから下り始めた。
尾根の急登が始まる岩場の手前に笹ヤブに突っ込むようなかすかな踏跡があった。笑うしかない。
台高の沢のスケールに呑まれているのかもしれない。

エメラルドグリーンの釜のプールをトラバース。
幅広のナメ滝を水滴を撒き散らしながら歩いていく。
少し傾いてきた光に雫が乱反射する。

ゴーロが続く。
ゴーロと言っても丹沢や奥多摩の沢のゴーロではない。
転がる岩のスケールが5倍はある。
ゴーロ岩が3m程の滝を作る。

アザミ谷の出合いにつくと
エメラルドグリーンのプールに巨大な岩が作る滝が2本かかっていた。

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その景色を観賞するためにできたような高台がある。

テント二張でいっぱいの広さ。
先人の焚き火の後があった。
焚き火のそばにはベンチのように倒木が横たわっている。
高台に至る緩やかな斜面は乾いた流木がたくさん。
ここでテントを張らずにどこで張るんだ。
天国のようなテン場を見て遡行意欲は下流に水と共に流され、アルコール欲求が沸々と湧き上がる。

焚き木を拾い集め、テントを張る。
沢の音が響く。
早速、焚き火を燃やし腰まで濡れた服を乾かす。
それ以外やることもない。考えることもない。
この単純な時間がたまらない。

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ビールを空け、焼酎を飲み、食事をとり、山談義に花を咲かせ、眠くなったら寝る。ただそれだけの夜。こんな夜を毎日繰り返しながら死んでしまいたい。そう思える程、幸せな夜。

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翌朝は4時頃起床した。
ヘッドランプで朝飯を掻き込む。
テントを手際よく片付け、雉撃ちに。
先輩方の用意は手早いので雉撃ちしてるとどうしても遅れてしまう。

空は明るいが、尾根が邪魔して太陽の光は直接入ってこずまだ薄暗い。
歩き始めてすぐ現れた奥七ツ釜は、それでも素晴らしい。
透き通る水に吸い込まれてしまいそうだ。
宇宙への入り口のようだった。

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美しい釜の色に歓声をあげていると、段々と川幅が広くなってきた。
岩も小ぶりになる。
流れが大きく西に曲がり、木々の間からは日出ケ岳の山頂が見えた。

すこし人の気配を感じる、すぐ近くを林道が走っているようだ。
林道が河を横切る手前にこれまでで最大のプールがあった。
夏だったら間違いなく飛び込んだだろう。

橋桁の下で休憩していたら、地元の方が何か声をかけてくる。
河の流れのそばにいる僕等にはまったく聞こえない。
ゼスチャーで会話して、遡行を開始した。

しばらく川幅の広い平坦な遡行が続く。

なんでもないトラバース部分で僕は背中から落っこちた。
頭から岩の窪みに突っ込んだ。

落ちた距離も2m程でザックとヘルメットが守ってくれたがもし空身だったらと思うとゾッとする。

ここからは降りれないなと後戻りしたところに、
後ろから来たnavetakeさんが「ここ行けないの?」と声をかけてきた。
自分の感覚を信じて「僕には行けません」と言えば良かったのだが、高低差の小ささに油断した。
降りるために足を伸ばしたらその岩は完全にハングしていた。
足が振り子になり、ザックが重りになり、思いっきり背中から落っこちた。
まったく痛みはなかったものの、その後しばらくは少し気持ちが不安定になったように思う。
自分の判断に自信が持てない状態がしばらく続いた。
数mの高巻きでさえなんだか怖く感じる。

広い河原歩きに飽きてきた頃、だんだんと地形がゴルジュ状になってきた。
時折、腰まで水に浸かりながらゴルジュ帯を突破していると、いきなり連瀑帯の幕開けだ。

高度感もなかなかのもので、トラバースからの下降のためにロープを1度使った。
滝の直上が厳しい場所のトラバースのためにも何度かロープを出したように思う。

数十mの滝が3~4本続く最後の大滝はこの沢旅のクライマックスに相応しいものだった。
登攀グレードは2~3級。
ロープを使わずフリーで突破した。
緊張感はあったが怖さはない。
登る喜びが身体から溢れてくる登攀だった。

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大滝を抜けると、なだらかな斜面となった。
苔生すガレ場に年老いたコメツガと覚しき大木が聳えている。
沢の詰めとして厳しい部類では無いが緊張感から開放されたためか、
疲れがどっと出てきて足取りは重いものになった。

…のは僕等二人だけで、
Watayukiさんとの再会が待ち遠しいのか、
元々足が速いのかnavetakeさんはぐんぐん登り、
カモシカのように登山道を降っていてしまった。


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